女子のお尻ばっかり追っかけていたワケじゃないですよ。冷え込む夜の街を観察してるうちに凍死したり、夜桜の酔っ払い観察でゲロの砲弾にハチの巣になったり、若造の祈りの祭典、クラブに潜入して圧死したりして、いまのにしヤンは都合6代目なのですが、まあ、そのくらい果敢に突撃してきたわけです
そんなボクですが、この突撃を引退しようと思うのです。

ドサ健の言葉は正しい。人間、負けたらイカン。負けたら殺せ。でも、……。
行き付けのスナックの重い扉をあけ、カウンターのいつもの席に座りました。時計の針は夜の9時前を指している。他にお客は誰もいない。そして、最近はまっているタバコを取り出し、静かに飲み出しました。
「あら、ずいぶん早い時間に来たのね。まだ準備してるから、ちょっと座っててよ」
「ママ、ボク、突撃編集者、卒業しようかとおもってるんだ……」
「あら、あんなに一生懸命やってたのに、どうして? 速度制限ナシで脳のダメージが心配になってきた?」
「そんなんじゃナイんだ。日本のGDPは7%だし、豚丼もそれなりに旨いし。なんとでもやってけるよ」
「じゃあ、なに?」
「……神戸に好きなコができた。一途な愛。小さな恋の物語」
「どうして好きな子ができたら、突撃やめるの?」
「男の夜遊びって、女子に興味がないと正しくないじゃない。キャバクラで初対面の女子にも、君のためなら死ねる。愛と誠なセリフを残せるくらいの情熱がナイとダメだと思うんだよね……それができない僕はある意味、死んだんだよ……」
いつもは酒を注ぎまくる、肝臓バスターなママがめずらしく真面目な顔でいいました。
「酒もやらなきゃ女もやらず、百まで生きたバカがいたっていうじゃない。だけどそれってさ迷う男のセリフよね。本当の幸せはね。理解してくれる人と一緒にいることなの。満ち足りて、もうあがく必要がなくなることなの。良かったね、にしヤン。その一歩が幸せになり、その一歩が幸せになる。迷わずいけよ、行けばわかるさ!」
いちにっさん! ダーッ!
誰もいなスナックでママは闘魂を決めて、ボクにおめでとうを言った。
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