| ポケットマネー……1,950円なり…… |
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それはなまり色の風が吹く寒い夜だった。テレビの天気予報は氷点下の見込み。時計の針は22時を回っている。こんな日はアレだ、とっととお家帰って、おコタでホッピーでも飲みながら、テレ東の水着ギャルでウハウハ。おっさんやりたい放題の夜にするに限るな……。
コートの襟を立てて、そっと立ち上がろう……としたら立てなかった。後ろから裾をしっかり掴んだりして、なんしちゅうがですか、御大!(というかお久しぶり!)
御「にしヤン、おまえ、ロック好きか?」
に「は? 好きですけど、それが何か?」
御「ロックっちゅうのはなあ、哀しいモンだぞ。繊細さと憤りを併せもっているからして、時に自暴自棄になる。ラブ&デンジャラス。それがロケンロール。ああ、俺は聞きたいなあ、そんな魂の叫びが」
に「それを言うならラブ&ピース」
御「きょ〜は何の日、ふっふーっ♪」
に「そりゃ、『おもいっきりテレビ』のテーマでロックじゃないでしょ……」
御「よく考えろ。今夜はムチャクチャ寒いぞ。その上、平日木曜日、月末の23日。わかるか? この意味がわかるか!?」
に「干しブドウくらい縮みあがる景気の悪い話ですな」
御「うむ。給料日前日、氷点下の極寒、これから終電。夜の遊び場事情としては、まさに地獄のキーワードだ。ああ、知りたい。俺の中のリッチー・ブラックモアが地獄の沙汰を隅から隅、奥の奥まで知りたがってるぞ」
に「えーっ。まさか、こんな夜に繁華街に突撃しろと……」
御「俺の中のリッチーが所望だもんよ、仕方ないだろ。行ってこい。ぶつかってこい。もしなんにもなかったら、凍死オチで笑いとれ」
に「いくら寒くても、死にゃしませんよ……。しょうがナイなあ、給料日前日なのは僕だって同じですよ。経費くださいよ」
御「うん? 金か。俺のポケットマネーを持ってけ、いやいや、気にするな、遠慮するな、ドーンと持ってけ」
に「ドーンとって1,950円しかナイじゃないですか……」
御「ふっ。このご時世、給料日前日にヤングなサラリーマンがいくら持ってると思う。こういうことはリアルにいかんと面白さが半減するからな……。そんで、オマエは今、いくら持ってんだ?」
に「1万円くらいはありますよ」
御「じゃ、それは俺が預かる。なにしろ、こういうことはリアルにいかんと!」
に「もしかしてアンタ、その金で飲みに行くつもりなんじゃあ!?」
御「楽しみだなあ、にしヤン、こんな夜だモン、ギャルが札幌雪祭りの氷の彫刻みたいになっているかもしれん」
に「なってませんよ……」
御「そういや、金がナイと体感体温まで下がるって、アメリカのFDAでも発表になってたな」
に「なってませんって……」
社内強盗に遭遇してしまい、身ぐるみ剥がされて編集部を放り出された。私、にしヤン、職業体当たり編集者。夜のヘクトパスカルと呼ばれる男。ええい、北風がナンボのモンやねん! びゅうーん!(風が吹き抜けた)。ああーっ! 死ぬ死ぬ死ぬーっ! このままじゃマジで凍死する。電車のあるうちに、新宿でも行ってみるか……。
−−終電間際の山手線で恵比寿から新宿に向かう。電車賃160円なり。
いざ、新宿に突撃!! |
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