| えっ、自動延長? |
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目が走馬灯になっているボクを、K田がゆすった。
「なにをそんなに怖がっているのですか。キャバクラにきて酒を飲まない、アナタそれは負け犬ですよ」 K田、すっかりおやじモードスタート。やたら盛り上がってます。
その後も女子は入れ代わりやってきて、超ラージの青天井。これまで手元に残った名刺の数はすでに5枚だ。しかし、ここでケツのポケットにねじ込んだ携帯のタイマーが作動した。入店からすでに50分。店は自動延長だ。そろそろ行かねば。動かざること山のごとしのK田の後頭部を貼り倒して、ボクはボーイさんを呼んだ。帰ります。チェックお願いします。 |
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| このまま延長されるのか? |
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かしこまりましたと店の奥に消えたボーイさんが、5分過ぎても戻ってこない。悪い予感がした。このままジリジリと時間が過ぎて、延長になったりして……そんで、延長は1時間4万円だったりして……テカリ始める汗。25、26、27と〜私の人生暗かった〜。藤圭子を歌ってみたりした。
ボーイさんが戻ってきた。フロアマネージャーらしき彼は、カツ上げの要領でぐっと顔を寄せてきた。
「お客さま。あははははー。当店は初回に限り1時間1,000円のサービスになっておりますが、ワレコラ、まさかサービス時間だけで帰るつもりじゃないですよね、このタコ、あははははー」
そう言われると思った。K田を人間魚雷にして逃げる気満々だった。
だが、実際は違ったんである。ある意味、彼の言葉はもっと怖かった。
「お客様、いまの時間、すこし席が空いておりますので、もしよろしければこのままいていただいても構いません。女のコはつけますし、もちろん、料金は1時間分だけでけっこうです」 |
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| 払ったお金は…… |
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耳を疑った。うぞ? マジで? リアリー? あまりのことに動揺するマッキーズなんだかワケがわからないが修羅場だった。
それからたっぷり1時間。彼の言葉に嘘はなく、美貌稼業の女子たちをタダではべらして、ある意味、ひいひいゆわされたのです。優しくされすぎると、人間すくみあがる。にしヤン、始めての経験でございました。
トータル2時間飲んで、席に来てくれた女子の総数は9人。K田と合わせて19人。支払ったお金、二人で2,000円。ホントに2,000円だった。
さらに席を立つ間際。ご丁寧にも今日イチバン気に入った女のコを見送りにつけてくれるというサービスぶり。ボクらは神さまとヘブンの存在を確信しながら、出口でお気に入りの女子と最後のトークをした。また、遊びにくるからねー。目がウルウルした。感動していた。
「うん、また来て。でもね、次からは普通の料金になるから、そこんところは気をつけてねー」 |
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| 次も1,000円で! |
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僕たちはハッとワレに返った。そーだった……。
ここでまたしても携帯メールが着信した。 『そろそろ毒蛇の正体がわかった頃かのう。安いっていっても、成り行き次第でどうなるかわからんよー、キミ……』
試合終了一秒前、ダメを押しの追伸だった。
僕らはすでに猛毒ヘビ、南米のフェルドランスに噛み付かれたあとだった。全身にラメ入りの毒が回っていた。解毒剤がほしければ、つぎは正規の料金で遊びに来るしかない。僕らは油汗ガマガエルになった。資本主義のヘブンがパックリと口を開けていた。動揺をかくせないK田が側にいたボーイのにいさんにすがりつく。
「次も1,000円でいれてくれるっちゅーワケにはいかんのかーっ!」
今夜もマッキーズはわがままだった。そして極細だった。 |