
で、晴れてホリプロに入られて。その頃って当面の目標とかってあったんですか?
「とにかくネタを作って、ネタ見せすること。それだけでしたね。で、その中におもしろそうなヤツがいたらね『新人コーナーに出ていいよ』ってなるのね」
「ホリプロ主権のライブみたいなのがあるんだけど、そこに出ることかな。前半と後半の間に新人コーナーみたいなのがあって、そこに出ることですね。で、おもしろいヤツは残ってね、つまんないヤツは消されちゃう。優勝したら1本ネタっていって、ライブで普通にネタができるんです。まぁ、そこに出ることを目標にしてたというか、それぐらいしかないんですよね」
周りの新人芸人さんたちも血眼って感じで目指してくる?
「ですね。同期はもちろん、先輩だって前に詰まってるし。必死ですね。でもね、オレ最初に出たときに優勝しちゃったんですよね」
「(あまりにも素っ気なく)全然。同じ事務所の人間ばかりだしね」
・・・・・・。そ、そうですか。でも、やっぱり優勝は凄いですよ。で、いきなりの1本ネタに昇格ですか!
「いや、それがね、当時のホリプロはお笑いが盛んってわけじゃなくてね、上の方の人もお笑いに詳しい人なんていなかったのね。でね、オレの“あるある”ネタみたいなのやってる人間なんていなかったし、そんでもって前に出る芸でもないし、しかも漫談。結構笑いは取ってたって自分でも思うんだけど、上の方の人たちは『こんなんじゃダメだろ』『珍しいもの見たさだろ』とか言い始めてね、優勝したんだけど『もう1回優勝しろ』ってことになったの。ホリプロのライブで新人から1本ネタに上がるのは2回優勝って決まってるんだけども、そうしちゃったのはオレのせいなのね(苦笑)」
ハードルを上げちゃったわけですね。でも、せっかく優勝したのにモチベーションが下がりますよね?
「でも次のライブで2連続優勝したしね(平然と)」
「また優勝しちゃったもんだから上の方の人たちも『しょーがないな』ってことになってね、その次のライブから前半で1本ネタですよ。それからは、すぐに前半のトリまで上がって、後半のトリになるのもそんなに時間はかかりませんでした。その頃はトントンと行ってましたねぇ」

その頃から芸名は“つぶやきシロー”だったんですか?
「そうなんですけど、まさか一生ものになるなんて夢にも思ってなかったですね」
『オレはこれで行くんだ』的に、真剣に考えて決めたわけじゃないんですか?
「まったくないですね。『お前、明日の新人コーナーに出ていいよ』ってライブの前日に言われて『どうすんの、本名でやるの?』って聞かれたんで、同期の芸人らに『なんかいいのなかな?』って話しててそん中で決まったんですよ。本名でやるのか?って聞かれなかったらそのまま本名で出てましたよ」
「まさか自分でも『こんなに?』ってぐらいに、そんときはここまで一生ものの名前になるなんてホントに思ってないし『こんな小さな箱のライブのことなんて誰も覚えてないだろうからいいや』って。明日だけのものって思ってましたから(苦笑)」
ピンでやっていくことすら決めてなかったんですよね?
「そうそう。組むかもしれないしね。コンビって凄く興味があったし」
でも、この頃からつぶやきさんの芸風はかんせいされつつあったんですよね?
「そうなの。だからね、名前なんて変える暇もなくて、そんでもって誰かと組む暇もなくなっちゃった」
「だって楽じゃないですか(なぜか声を荒げて)」
「楽ですよ。なんかね、コンビなよく仲が悪いとか言うじゃないですか。でもそれってある程度売れて、ガンガンにテレビに出るというか、そういうのだったらお互いまぁそうなんでしょうけど。出だしの芸人なんてまだネタ見せばかりですから、そりゃ2人いたほうがいいですよ。ピンは自分でふって自分でボケて、自分で突っ込みいれるわけですから、しかもそれをわからせないといけない。2人だと導きやすいし、客も見やすいでしょ」
「もう嫌で嫌で。ネタを書くのがキツくて『もう辞めよう』って本気で思ってましたね」
「そうなんですけど、とにかくネタを書くのが嫌で嫌で。ホントにね、ギリギリになんないとやんなかったですね。ネタ見せの当日にネタ書いてたりするし、他のみんながネタ見せしてるのなんて全然見ずに自分の書いてるのを必死で覚えてるだけだし、勉強にもなんなかった。でも、そんなのがまた客にうける。もうよくわかんなくてね、苦痛で、辞めたかった。『今度こそ辞めよう』っていつも思ってたんですけど、そんな感じでも時間はすぎていくわけで、色んなマネージャーとも知り合いになれて『挨拶はちゃんとしなきゃいけないなぁ』って考えてたら、わざわざ『辞めます』って挨拶に行くことにめんどくさくなっちゃって、今に至るんです」
「流されてきた感じですよね、適当に流されて何十年、こうきちゃったかなっていう(苦笑)」