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HOME > マガジントップ > インタビュートップ > 山城新伍 「あこがれの祇園の世界、教えましょうか」
夜遊びの達人に聞く:山城新伍
才に恵まれないほとんどの男性は、見栄を張らず、野暮を慎む。
●一見さんお断りは、合理的な連帯保証制度

京都のお茶屋さんには、“一見さんお断り”っていう昔ながらの制度があるから、たしかにだれでも気軽に遊ぶというのは難しい。お金をもってたってダメ。

銀座の女がいうもん、「成金のお客さんが、『こんどの休みに京都でも行こうか』っていっても、それ、一番実行率が低いの。北海道とかだったら、ちゃんと連れてってくれるのにね…」って。ほんとうは京都のお茶屋さんにでも連れていって、見栄を張りたいところなんだろうけど、彼らルートがないから断念するみたい。やっぱりね、一応はお金よりも人間関係が大切なんですよ、京都では。

一見さんお断りってね、あれ、連帯保証制度なんですよ。信用できるお客さんが連れてきたお客さんは信用するっていう制度。もし、紹介したお客さんが勘定を払わなかったりしたら、連れて行ったヒトが払わなけりゃならない。古いけど、合理的にできているんですよ。ややこしいカードよりも安心。

僕は、祇園には20代のときに勝さんとか錦之助さんとかに連れて行ってもらった。

でね、そんなときに芸子さんが、いうんですよ。「お兄さん、偉ろうなって、また来ておくれやす」って。当時、『白馬童子』の撮影とかは京都だったんですけど、もう目の前に大きな目標があるから妙に頑張れるわけ。「よーし、いまに見ていろ。一人で祇園に行けるようにしてみせるぞ、芸子さんを愛人にしてみせるぞ」って(笑)。

んっ? もしも祇園に行けたらどうすればいいか? うーん、そうね、見栄張って通ぶらないことだな。素直に「一度こういうところに来てみたかった」っていう風にしていれば、好感もたれると思うよ。粋に遊ぶなら、小唄のひとつぐらいやれたりするといいんだけど、そりゃ君、10年も20年も早いって(笑)。


●スナック数軒を廃業に追い込んだ『仁義なき戦い』

若い頃は、僕だっていろんなところで遊びましたよ。ナイトクラブなんて、よく行ったなあ。もう粋なんてもんじゃなくて、ただただ大騒ぎしてた。水原弘なんかが、こう、アイスペールにブランデー2本ぐらい入れて飲みはじめて、あー、無茶するなーと思って見てたら、それが回ってきて飲まされてフラフラになったりしてね(笑)。水原弘は、あれで肝臓やられちゃったんじゃないかなぁ…。

『仁義なき戦い』を撮っていたときも凄かったですよ。深作欣二監督って演技指導はあまりしないヒトだったんだけど、みんなで酒飲んだり飯喰ってりゃ気心が知れて作品もいいものができるという発想をもっていた。共食信仰みたいなもんです。で、いつも深夜の2時ぐらいまでねばって撮影するんですが、それが終わると必ず出演者を大勢連れて撮影場所の近くのスナックなんかに繰りだしていました。監督を筆頭に、菅原文太、小林旭、梅宮辰夫、松方弘樹、渡瀬恒彦…かなり豪華なメンバーなわけですよ。まあ、こういうの、普通ならスナック側にしてみれば大喜びといいたいところでしょう。だけど、それが、ぜんぜん逆だった。あんまり大勢で行くもんだから、お勘定をだれがするか曖昧になっちゃってた。だーれも払わないんです。大酔っぱらいのうえに、みんな広島やくざのつもりでいたから「わしゃぁのう」とかやってるし。あれで店、何件か潰れてますよ(笑)。

とにかくあの撮影のときは朝までよく飲みましたよ。僕いつも冗談でいっているんだけど、「『仁義なき戦い』って、みんなサングラスしてるだろ。あれね、寝不足だからなんだ」って(笑)。…もう30年前の話だけど、あの作品が華やかに役者が揃って遊びにいった最後かもわからんね。

僕も長く夜の街で遊んでいて思うけど、やっぱり銀座でも祇園でもどこでも、野暮なことやっている奴は、もてませんね。たとえばね、気に入ったホステスさんや芸子さんがいたとしても、そこで「こいつはオレの女だ」みたいなそぶりを見せるなんて慎むべきです。その女性の仕事や人格を尊重する意味でも、それは大切なポイント。もし、ちゃんとできている仲になったとしてもですよ、大勢で飲みながら、他のヒトに気づかれないように振る舞うのって粋だと思うな。でね、周りも、ふとした二人の目配せや箸の運び方とかでなんとなく関係に気づいたりするんだけど、それについては、なんにもいわない。秘め事は秘め事として、あたたかく見守るっていうか、なんかね、そういうのが素敵だし、楽しいわけですよ。

あっ、でもね、そういえば梅宮辰夫。昔はあいつ銀座の帝王だったんだけど、そんなに気をつかわないわりに、癪にさわるくらいもててたなぁ(笑)。その秘訣を僕も学ぼうと思って、いろんなママに聞いたことがあるんだ「いったい梅宮のどこがいいの?」って。そしたら、みんな「なんだかわからないけど、とっても“いなせ”なのよ」って答えるんですよ。いなせって、いまや死語に近い言葉だけど、そのヒトの面相とか、体型とか、態度とか、言動とか、いろいろな要素が絡んで、水商売の女性たちをひどくひきつけるオーラみたいなものがあるらしいんだね。まあ、こればっかりは、天賦の才としかいいようがない。努力したってそうそう身に付くもんじゃないです。だからね、その才に恵まれないほとんどの男性は、見栄を張らず、野暮を慎むことを旨として遊ぶことが肝心なんですよ。やっぱり。

山城新伍
山城新伍(やましろ・しんご)●俳優
山城新伍 1938年11月10日、京都の上七軒という一番古い色街のそばで、医者の息子として誕生。商売に徹しきれない赤ヒゲ的な医者で人情に厚い父上。その父上の診察室に通う芸者さんを間近に見ながら、多感な時期を過ごす。高校卒業後の1957年に東映のニューフェース第4期生となり、翌年、あこがれの映画デビューを果たす。そして60年、21才のときに伝説のテレビ映画『白馬童子』の主役をつとめ、茶の間の大スターとなる。その後は、映画『仁義なき戦い』シリーズや『不良番長』シリーズへの出演のほか、テレビや芝居など、年齢を経る毎に活躍の舞台を大きく深く広げていった(いまの30〜40代の男性諸氏には、エッチな番組の名司会ぶりやカップ麺のCMでの粋な旦那ぶりなどが、かなり強烈な印象として残っているはず)。ここ数年は、映画作品や著作などの発表がつづき、表現意欲が旺盛であることを示している。
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