
●小心者だからこそ憧れる男らしさと昼酒!?
とにかく僕のカラオケって、うるさいんスよ。ほんとうに喉から血がでるくらい叫ぶんです。あるとき嫁さんが、「うるさい」ってカラオケのコード、ブチって切ったことありますから(笑)。
でもね、じつはしみじみした歌も好きでね。河島英五の『酒と泪と男と女』が自分としては一番好きだったりするんですよ。まだそんなに酔ってなくて、ちょっと自分というものが残っているときには、これ、歌いますね。僕は相撲ではちっちゃな負けん気はあるんですけど、本当は気が弱い小心者だという自覚があって、この歌にある男の在り方に、すっごく憧れたりするんです。男は人前じゃ泣けないヨーみないなところね。……ま、そういいながらも僕、断髪式のとき、ほんの数秒泣いちゃったんですけどね。新聞に写真も載ったりして、あれはカッコ悪かったー。ずうーっと土俵では泣かないって決めてたのになあ。
小心者っていうことでいえばね、なんでもないことで、ドキドキすることも多いっスよ、自分。たとえば、そうだな……、ほら、相撲って日曜日に千秋楽じゃないですか。そうすると月曜の昼なんかに、酒飲めちゃったりするんですよ。で、ホッとしてるから、それがたとえ缶ビール1本だけでも、とてつもなく美味いわけですよ。だけどね、一方で「えっ、いいのかなあ、みんなが仕事してるときに、自分だけこんな贅沢しちゃって」って、なんかドキドキしてしまうんですねぇ。
いまでもそう。現役引退したんだから、毎日稽古する必要がなくて、昼酒やろうと思えばいつでもカンタンにできちゃうんですけど、そう思うだけでドキドキしてしまうんですねぇ(笑)。近くに、朝の10時くらいからやってるおすし屋さんがあって、いっつもそこに飛び込んで飲んでみたいなって思ったりするんだけど、なかなかできない。嫁さんに「オレ、こんど昼間に、ちょこっとあそこで寿司食って、酒飲もうかと思うんだけど」っていうと、「ああ、いつでもいってらっしゃいよ」って気前よくいってくれるんですが、やっぱりスッと行けないんですよね。……可笑しいけれど、堂々とした昼酒、自分の夢っスね(笑)。
えっ、女の子のいる店? ああ、まあ、いっぱい行きましたけどね。スナックとかクラブとか、後援会のヒトに連れられたりして。キャバクラ? ああ、行ったことありますよ。でも、じぶん、行ったときは、そこがキャバクラって知らなかったんですよ。なんか、いろんな女の子がよく立ったり座ったりするなあ、とか、名刺がやけにいっぱいたまったなあ、とか思いながら飲んでたんですけどね、へへ。
そうそう、巡業で福岡に滞在したときには、キャバレーとかはよく行ったかな。何が好きって、ああいうところって、ほら、全席が舞台を向いているじゃないですか。男も女もみんながひとつのモノを見ていて、それがなんとなく昔の映画で観たことがあるような雰囲気があって、すっごくいい。便所で知らないおじさんに会っても、妙な連帯感が感じられたりするんですよね(笑)。
日ごろは、じぶん、だいたい嫁さんといっしょに飲みに行きますね。スナックでもどこでも、家族ぐるみで友だちと飲むケースが多い。飲みだしたら僕は友だちとギャーギャーやってて、嫁さんは、まあ静かな監視役みたいな感じで座ってます。監視役っていっても彼女、僕が飲んでるときは、なにもいいませんよ。調子に乗りすぎて、あんまりひどいときは、さすがに次の日にちょこっと怒られるけど(笑)。ほら、みんなで楽しく飲んでるときに怒るヒトがいると、その場の雰囲気壊れるじゃないですか。そのことわかってくれているから、怒るのは次の日まで待ってくれるみたいなんです。友だちとのいい関係づくりのうえで、それはすごく助かってますね。
僕ね、つねづね女は強いなあって思うんですよ。うちの嫁さんもそうなんですが、延ちゃんの奥さん(タレント・向井亜紀)なんかも人間として、かなり強いっス。やっぱり家族ぐるみで飲んだりして親しくなったんですけど、彼女、僕が現役としてけっこう辛い時期に12勝して勝ち越したとき、電話にメッセージを残してくれたんですよ。「勝ち越せてよかったね」って。「これからも頑張ってね」って。で、これはあとで知ったんですけど、そのメッセージを残してくれたときって、彼女が明日大変な手術をするっていう日で、ヒトに気を遣っている場合じゃないだろうっていうときだった。もう、すっごい感動しましたね。じぶんがその立場だったら、そんなことできないっスよ。…なんなんですかね、あの強さって。男らしい男は、もしかして女の人にいるのかもしれないですね。
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酒は、大切な友だちをつくってくれる。僕の人生に欠かせないものです。よく「タバコと酒、どっち辞める?」って聞くと、みんな酒って答えるけど、僕は逆だな。タバコはスパッとやめられたけど、酒は、ケガで休場してるとき、復活のために4カ月我慢したくらい。
最近で一番おいしかった酒ですか? うーん、だいたい飲むと記憶なくなっちゃうからなあ(笑)。あえていえば、子どもがはじめて注いでくれたビールかな。あとは引退した次の日に、友だちと飲んだ酒かな。そう、あのときは、もう相撲がとれないという寂しさでいっぱいだったんですが、そのなかに「ああ、もうあのイヤな緊張感をもたなくてすむんだ」というホッとした気持ちもあったりして……。
あっ、でも、自分の場合、友だちと飲むとき、その一杯目は必ずおいしく感じますかね。友だちといついつ飲もうって約束して、それでその日がきて、そいつらと会えて、ああ、うれしいな、うれしいなって思って、いただきますっていう瞬間がきて……。その一杯目が最高においしいなぁ。うん、だから、僕はいつもおいしい酒を飲んでいることになるんスね(笑)。 |