
●アメリカでのナイトライフは怖い思い出いっぱい
じゃあ、独身時代はもてただろうって? ずいぶん食い下がるねー(苦笑)。
まあ、そりゃ、そこそこもてたし、遊びもしましたよ。でも銀座じゃなくって、興業先のススキノとか博多とかの夜の街で遊ぶことが多かったかな。なんかさ、この二つの街の女の子は、みんな気だてがいいような感じがあったね。情熱的で開放的だから損得抜きで楽しく遊ばせてくれた。しかもカラッとしてるから後腐れがなかった(笑)。
若いころのアメリカでの修業時代もいろいろあったよ。
基本的にアメリカってだだっ広い田舎だから、銀座みたいなナイトライフをおくる場所ってないんだな。ま、ニューヨークとかの都会は別だろうけど、どの街いってもせいぜいホテルのラウンジとか、なんでもない普通の酒場がある程度。で、そこに男も女も、みんないい出会いを求めて集まって来てたね。知らないヒト同士で「ハーイ」「ハーイ」って気軽に挨拶して仲良くなるんだ。
で、ある時、ナッシュビルあたりでの試合の後にそんなところに飲みに行ったら、ちょっと気になる女性がいてさ、ナンパしたんすよ。そしたらなんとなく「今夜はオーケー」ってことになって、いっしょに彼女のアパートに向かうことになった。わくわくしながら彼女のクルマに乗ったんだけど、行けども行けどもなかなか着かない。「あれぇ、すげえ山の中まで来ちゃったなあ……」なんて思ったころにやっと着いた。待ちに待たされたけど、これからいいことできるんだから、ま、いっかってな感じで部屋に入った。するとさ、ガキが寝てたんだね。彼女さ、そのガキの顔見てさ、振り返っていうわけだよ。「やっぱり今日はできないわ」って。
それ聞いて、オレ、こんなところまで来たのになんだよって、頭きちゃってさ。なんか知らないけど、思わず外にでちゃったんだな。そしたらこんどは鍵かけられちゃった……(笑)。「開けてくれ」ってドンドンやってもとりあってもらえなかった。困っちゃったよー。夜中の2時に山の中に放り出された格好。朝になったら試合会場に向かってみんなといっしょに出発しなければならないっていう状況もあったしね。こりゃもう、ホテルまで自分の足で帰るしかないなって腹くくって、走ることにした。途中通りかかるクルマをヒッチハイクしたって止まってくれやしない。まあ、真夜中の寂しい道で、大きな男が手を挙げてたら、止まるほうがおかしいんだけどさ。民家に置いてある自転車も目に入って、盗んじゃおうかなって思ったりもしたけど、良心がゆるさなかった。そんな感じで延々走りつづけて、なんとか朝の7時に到着した。みんなオレのヘトヘトの顔見て、「なにやってんの〜お前は」って(笑)。
危険な目に遭ったこともあったよ。試合が終わって、マイアミのホテルのバーでプロレスの仲間と飲んでた時のことなんだけど、カウンターの中の女性とお客の男性のケンカ、あれは怖かったな。最初は二人ともすごく仲良く話してたんですね。アメリカの酒場らしい光景ですよ。ところが、何が原因か知らないけど、急にケンカしはじめたんだ、そいつら。口ゲンカならまだしも、男のほうが急にピストル撃ちはじめやがんの。バン! バン! バン! バン!って乱射するんだ。オレたちレスラーもびっくりして、みんなテーブルの下に潜り込みましたよー。ま、女性も無事で、その後警官がすぐに来て男も捕まったけど、なんだろうねアメリカって。なんか気に入らないことがあるとすぐに拳銃ぶっ放すんだから、普通じゃないよ。怖いよ。おちおち遊んじゃいられないって。
●幻の銘酒を盗んだにっくき犯人は天龍源一郎か?
外で飲まない時は、ウチでテレビ観て、嫁さんの料理つつきながら、好きなワインとか焼酎飲んでますよ。
好きな銘柄? なんでもいいね。ただ、ファンはオレが焼酎好きだって知ってるから、たまにいい焼酎とかプレゼントしてくれたりする。何万もする『森伊蔵』とかさ。やっぱりいい酒は旨いよ。
この前は、『越の寒梅』の焼酎版もらった。じつはこれ、巡業先のファンから贈られたものなんだけど、一度、移動のバスの中で誰かに盗まれちゃって、くれたヒトに「すみません、盗まれちゃったんです」って報告したら、もう一本くれたっていういわく付きの酒。誰が盗んだか? たぶん、オレ、天龍源一郎がやったと思ってるんだけどさ、うん(笑)。
オレ、膝悪いじゃない。だからさ、本当はあんまり酒飲んじゃいけないんだよ。炎症を広げちゃうからね。でも、練習の後とか喉乾くから、いつも水分に飢えているわけだよ。で、ガーって飲むんなら、コーラなんかより、ぜったい砂糖とかが入っていない苦いビールのほうが体にいいような気がする。アルコールで膝の痛みを一瞬でも忘れることができるしね。
二日酔い? うん、よくなるよ。オレ、二日酔いになると、逆に普段の2倍近く練習して汗流すね。本当はよくないんだろうな、こんなやり方。でもさ、プロレスラーとして、それをやり抜くってのが大事でね。楽しく遊んだ分だけ自分を苦しめるんだ。じゃないと、こんなに長くつづけられないって、プロレス。
ま、ここんとこ社長やりだして、悩み事が絶えない。それも二日酔いを増やしている原因になってるかな。うん、正直いって酒に現実逃避してるね。なんか最近、心弱いなー、オレ(苦笑)。
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最近の若いレスラーって、みんなあんまり遊ばないし、酒飲まないね。一生懸命肉体づくりに励んでいるから、体によくないものは摂取しないってことらしいよ。真面目だよー。
でも、オレからいわせると、だからプロレスが面白くないんだよ。真面目な野郎は、遊びのない真面目なレスリングしかできない。いくら勝ったって、お客さんに感動を伝えられないんだな。
オレの師匠のアントニオ猪木さんって、その対極にいるヒトだと思うよ。遊んでいるとかなんだというよりも、人生そのものが滅茶苦茶にすごいじゃん! 事業やって何十億も借金抱えたり、突然北朝鮮に行っちゃったり……。その企画力というか行動力は、普通の想像を超えているよね。だからジャングルファイトだなんて、お客さんもびっくりするような試合ができちゃうんだな。生き様がプロレスにでてんだよね。偉大だよ。
オレもやっぱり、そんなプロレスやりたいよね。遊んでハチャメチャやって、そういう背景を糧にしてリング上で闘いたい。だから、グレート・ムタになったり、武藤敬司になったり、黒師無双になったりして化けているのも、マンネリ打破っていう部分のほかに、ある意味、オレの人生の器量、つまり闘い方の器量がどこまで広がっているかっていう表現にもなっているんだ。
おい、これ読んでる若い奴ら、もっと遊べよ! だけど、一人で銀座のクラブとか、あんまり行くなよ! そんなに金があるんだったら、オレを連れてけって(笑)。 |