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HOME > マガジントップ > インタビュートップ > 江守徹 「欲望を捨てる最中ってのはいいものに会いたいじゃない」
夜遊びの達人に聞く:江守徹

●365日、人生の真ん中に酒があるね

酒はさ、必需品なんだよ。お酒がないとすぐ食事も終わっちゃうよ。人間、けっきょくは快楽だからさ、生きていればいいっていうものじゃないだろうっていうことさ。ヒトはパンのみに生きるのみにあらずというけど、いやー、食べるために生きてるんだってね。そうすると、どうしても酒が必要になりますよ。僕の人生の真ん中には酒があるね。だから365日飲んでるよね(笑)。

でもいまの若い人はそうは思わないのかな。飲み方が少なくなったような気がする。僕たちのときはすごかったよな。ぎゃあぎゃあやって、けんかもしてさ。それがすごくいいことだとはいわないけどさ。だけど、やっぱり、ちょっとこう羽目を外すようなことを知っておいた方がいいと思うな。そのなかで酒という人生の快楽を覚えてほしいよね。あんまり快楽に臆病になることはないよな。もっと自分に正直になんなくちゃいけない。ただ一方でね、酒を飲めないとバカにされる、酒に強くないと恥ずかしいとか思わない方がいいね。自分にあった飲み方って、きっと見つかるはずだから。

あと、いいものを知ることは大事さ。すべて。映画でも、芝居でも、小説でも、なんでも。音楽でも。最高のものを知っておくと知らないとでは、ほかのものに対する見方が全然違ってくる。機会があったときにはそれを逃さないようにしてほしいな。お金がかかるって? いや、芝居でもさ、別に高い席でなくていいわけだよ。一番後ろの席なら安く観られるんだから。ねっ。そういうことをつづけると、人間の価値っていうものが、うん、あがるよ。やっぱり、酒でも食べ物でもホントのいいもの(高いものって意味じゃないよ)を知る機会があればあるほどいいよ。

全部、マクドじゃあ困るわけだよな。僕らの子供のころだって金がなかったさ。でも、貯めておいて、あるとき、ひょっとやろうとかする。ほかのつまらないことに使わないこと。君、わかった?


あー、ひつこいけどね、酒を飲む時間を無駄な時間と思ってもらっちゃ困るんだよな。睡眠を無駄な時間と思うのと一緒のことだよ(笑)。寝なければ倍生きられるなんて思うのと一緒だよ。人間は寝なければダメなんだから。そしたら、できるだけいい睡眠を取りたいと思うじゃない。同じなんだよね。酒も食事も。

生きるためだからって、食事は5分や10分でいいって、じゃあ、何が楽しいんだってことだよね。セックスだってそうでしょ、君。うん? どうでもいい女とさっさと済ませればいい? そんなことないよね。

食欲も性欲もどうやったって消えないんだから……。食事したりさ、セックスしたりさ、欲望を捨てる最中ってのはいいものに会いたいじゃない。後は苦しむこともたくさんあるわけだからさ、仕事とかね。人生、後戻りできないんだよ。生まれてきたら、幕あがいて下りるまで戻れないんだよ。せめて欲望を解消する時間ぐらいは、快楽に身も心も委ねて生きるってのがいいじゃない。

江守徹
江守徹(えもり・とおる)●俳優
江守徹 1944年1月25日、東京都に生まれる。高校卒業後、文学座附属演劇研究所に入り、1963年に卒業。卒業の翌年、いきなり「大麦入りのチキンスープ」で主役に抜擢され、演劇界での第一歩を踏む。1966年に文学座座員になり、「ハムレット」「オセロー」などで大役を演じ、誰もが認める演劇界の中心的存在に。1975年のNHK大河ドラマ「元禄太平記」で大石内蔵助役を演じ、茶の間の人気も得るようになる。その後は、TV出演のほか、映画出演、脚本、演出なども手がけるようになる。最近では、バラエティー番組のご意見役としても人気。女子高生、若手タレントなどの若者に対する歯に衣着せぬ発言ぶりはご存知の通り。しかし、単なる口うるさいオヤジとして煙たがられているわけではない。幅広い分野に精通するインテリジェンスを持ち合わせているが故に、若者もその言葉にはつい耳を傾けてしまう格好。実際、女子高生の間では好感度バツグンの評。
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